
DIALOGUE017
プランについて part2.
話し手:代表取締役 渡邊
建築において、本当に大切なのは、敷地の特徴を読み解き、周囲の環境と調和するデザインを生み出すこと。(前回より)
今回は、敷地を最大限に活かし、自然と調和する建築のあり方について掘り下げて伺いました。

自分たちがそれを本当にできてるかって言われたら、ちょっと...ん~100パーセントとはちょっとね、言い切れない。それだけ逆に難しいってことだよね。でも 履き違えてんじゃないですか、最近はずっとそこ。なんだろうな、新しいものが良いとか珍しいのがイコールいいみたいな。違うと思うけどね、それ。はき違えちゃダメだよ。奇抜なとかさ、目立つとか。だから他にない外観ですねって言われるのはなんか複雑なんですよ、私としてはね。他にない、それって1歩間違ったらなんか目立ってんのかなって。でも逆に言えば、他が奇抜だから?うちは目立とうと思ってなくても目立ってしまうこともあるのかな...。少なくとも、私がって言ったらおこがましいけど、目立たせようなんて思ったことはないんで。1つもないから。なんか奇抜な感じにしようとか、他にないものにしようとか。そんなことを考えてなんてやらないよね。いかに目立たないようにするか、控えめにするかとか。だから建物の高さもあんまり高くしたくないし。
ーあ~そういうところからきてるんですね。
だってさ、地面は平らなんですよ、横に広がってんだよ。都会じゃあるまいしさ、2階建ての家が並んでるとこに、なんでこんなぽんって高い建物建てたらさっき言ったことに反する。目立つ。
日本の建築の素晴らしさっていうのは、水平ラインの美しさだから。軒先とか横に広がって。みなさんが見て素敵な建物だなとか、伝統的な建物も含めて、基本的に水平の美しさだよね。屋根が水平に広がっていて重心が低いっていうか...。うん。
京都、京間なんてそうですよね。畳の寸法が縦と横の比率が基本的には横が長い。 関東間とかよりね。そうなると全体、重心を低くしようとするよね。意地でも。高くするのは簡単だから。こういうこと言うと多分炎上するんだろうけど(笑)。いや、でも簡単です。2階建ての建物の高さを高くするのは。上に伸ばすのは楽だから。なんだって楽。配線も楽だし配管するのも楽。天井高くしますって言うと喜ぶじゃないですか、お客さまね。なんか高い天井がいいとかさ、言いますよね、みんな。簡単ですよ、高くするの。

天井裏とかが広くなったりするのでいくらでも電線とか配管とか空調の機械とか簡単に入れられる。低くするってことはその限られた中で、バランスを取って、かつ狭苦しくないように考えるわけ。天井高とか高くなく、 こう適切な広さ。結局狭いって感じちゃ嫌だし。だからといって必要以上に高くしたくないし。構造的にも重心が低い方が有利だしね。
ーうちはどこの部分が狭いんですか?屋根裏が狭いんですか?
うん、多分天井と屋根との間はそんなに広くはないと思う。
ー天井高が低いわけじゃないんですよね?
うちは若干低めだと思うよ。普通のメーカーさんの家と比べたら 低めだと思う。測ったら「数字自体は」低いと思うよ。

一概にね、全部低くすればいいってわけじゃないんだけど、でも無駄な高さはいらないっていう風に考える。結局最初に戻るわけだよ。その風景に、敷地で決まるのでそこを邪魔しないようにって考えたら、結果的にそういう風になっていくってこと。
とにかく、敷地をどれだけ読み解くかっていうのがまず最初だから。どんな敷地か。周りにどんな建物建ってるか、周りにどういう景色が見えるか。 広さはどうか?高低差あるか、とか。もうとにかくそれが重要。
じゃあなんで、ここからプランが出てくるんですかって言われると、それ(敷地条件)がベースにあるから、現地、敷地を見に行った時に出てくるわけだよ。 敷地に行って、日の当たり方とか周りの景色、どういう風に見えるのかとか。何が見える?見たい?見たくない?とか、周りにどんな建物が建ってるとか。 そこでうろうろしたり、いろんな角度から見たりとか眺めてれば、ここにはこういう形の建物が、なんだろう、建物が建ってて欲しいっていうのが浮かんでくるわけだよ。 まずそれがベース。
ただ、ただですよ、それが浮かぶためには、これはもう今では流行らないんだろうけど、圧倒的な数、経験が必要です。経験っていうのは年数っていうよりも、なんだろう、たくさんみて、体感して思考したっていう経験。どれだけ「ちゃんとした」建物を見て考えたか。 住宅もそうだし、住宅に限らず、いわゆる敷地とちゃんと調和してる建物。それは日本にはまだある。 そういうのをどれだけ見たか。見ると言ってもただボケっとして、あれ、こういうの言わないんでしたね(笑)
スマホで写真撮るのはいいんだけどさ、写真撮る前にやることがある。 写真じゃなくて、ちゃんと見るってこと。スマホで撮ることが優先じゃなくて見るってこと。その、周りの空とか、周りの建物とのバランスとか。写真じゃダメ。

実際のスケール感として見ないと。なんでこういう形なのかなとか、なぜなんだろうっていうのをひたすらそこの建物で、できれば何時間かそこにいて家の中にいて日がどういう風に入ってくるのかとか、変わっていくのを感じたり。見ればなるほどって、本当に素敵な建物ってのは全部に理由があるから。こういうことでこういう形になってんのかとか、そういう経験、体感をもうどれだけ経験してるか。
敷地を見て、次に実際に自分で手を動かして書いてみて。 最初のうちはやっぱり本当に書いてみて、書いたらあくまでもそれは仮説だから書いたらまた敷地に行ってこれは本当にこの敷地に合ってるのかな?っていうのを敷地で見て。その繰り返し。どうもダメだ、違うとか、敷地に行って見てみたらこれはダメだよなとか、全然家からの景色が良くないなとか、なんかちょっと違うなとかさ。そういうことの繰り返し。ひたすらそれをやれば出てくるんじゃないかな。出てくると思うよ。

何回も言いますけど、敷地が答えを持ってるから。 あくまでもその場所が答えを持ってる。自分の頭の中に答えがあるわけじゃないよ。お客さまが持ってるわけでもない。何回も言います。敷地が持ってる。だからそれがベースになる。
その後初めてお客さまの話。家族の人数とか家族構成とか、生活スタイルとか好みとか希望を入れてくわけです。当然、矛盾することもある。 平屋がいいって言ってるけど、いや、平屋だとちょっと成り立たないかもしれないとか。逆になんだろう、2階建てがいいって言ってても、いや、ここは平屋の方が絶対いいとかあるから。
でもね、何度も言うけど敷地をちゃんと読み解けば、ある程度決まるんだよ。玄関の位置とか。なんて言っても1番いい場所、1番気持ちいいところにLDKを持ってくるのが当たり前だし。
ただ、矛盾するかもだけど方位だけで、南側がリビングっていうわけでもない。 例えば南をリビングにしても、日も当たらない、目の前に嫌な建物がある、見たくもない開けられない。そこで北が抜けるんだったら北を抜くっていう選択肢を考えるからね。それはしつこいけど、やっぱりその場所、敷地が決める。
結果、その場所にとっては自然だって言うなら、北を抜くように取ります。ただしね、やっぱり日が当たらないじゃないですかとか、直射日光が入らないとか あるので、それをこういろいろ配慮するわけだよね。冬は寒いとかさ、 北風がとかあるんでね。
ーだから何回でも敷地見てこいと言うのですね?
1回敷地見ただけでプランできるなんて思ってたら大間違いだって。毎日でも見てこいみたいな。そのぐらいの話だよ、最初はね。
ーでも実際行ってみて、書いたプラン入らなかったみたいな...。
ほんと、そう。笑い話じゃなくそういうこともあるから、現地に行きなさいって言うんだよ。
プランについて part3.へ続きます
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021
プランについて・おまけ
これまでのプランについてのインタビューの締めくくりとして、ブレイクタイムの回です。語られるのは設計の本質や、住まいづくりにおけるプランの重要性について。建築の仕事はプランだけではない...。真に「設計する」ということの深みを、改めて振り返ります。
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020
プランについて part5.
家づくりで大切なのは、設計者を信頼し、自分の暮らし方や価値観をしっかり伝えること。ただし、細かな指示ではなく、「どう暮らしたいか」を共有することが本質です。part5では、敷地の特性を活かしたプランの考え方や、調和の取れた住まいづくりについて掘り下げて伺いました。
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019
プランについて part4.
家づくりにおいて、敷地の条件は決して無視できない重要な要素です。建物は単体で成り立つのではなく、周囲の環境と調和してこそ、本当に価値のあるものになります。今回は、街並みの美しさや住宅の本質について掘り下げながら、なぜ敷地を深く理解することが良い家づくりにつながるのかを語ります。
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018
プランについて part3.
前回のDIALOGUE 017では、建築に関して敷地の持つ条件を読み解くことが、設計の出発点であるという話をしました。今回はその続きとして、どのように敷地の特性を考慮していくかを掘り下げていきます。
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017
プランについて part2.
建築において、本当に大切なのは、敷地の特徴を読み解き、周囲の環境と調和するデザインを生み出すこと。(前回より)今回は、敷地を最大限に活かし、自然と調和する建築のあり方について掘り下げて伺いました。
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016
プランについて part1.
今回のインタビューでは、渡邊がプランのつくり方から始まり、良いプランとは?、WISE SCAPEが大切にしている基本的な考え方について伺いました。
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015
木材について part6.
「木材について part6.」では、自然乾燥や低温乾燥の木が持つ本来の特徴と、それを踏まえた建築の魅力について深掘りします。癖を見極め、動きを予測しながら家をつくる知恵や、木材に込められた文化と未来への代表の想いをお届けします。
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014
木材について part5.
木材についてのシリーズ第5弾として、乾燥低温の持つ木材本来の特性について、木の色や匂い、靭性といった魅力をどのように生かすか、高温乾燥との違いについて詳しく伺いました。
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013
木材について part4.
「木材について part4.」では、木材の選別に対する考え、特に低温乾燥機を使用して品質を保つ重要性や、材木屋さんのこと、個々の木材の「個性」を生かす思いを伺いました。
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012
木材について part3.
「木材について part3.」では、無垢材と集成材の違いや、木材の工業製品化による特徴の変化について代表に伺いました。
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011
木材について part2.
part2.では、国産材と外材の違いや価格変動、国産材不足の背景、木材資源の持続可能性や管理の重要性について代表が語ります。
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010
木材について part1.
今回は、木材についてです。材へのこだわりや、国産材を選ぶ理由、木の魅力、木への思いについて伺いました。
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009
大工について part4.
大工についてpart4、今回で最終回です。最終回では、社長の大工職への思いを伺いました。
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008
大工について part3.
大工さんに向いている人とはどんな方でしょうか?今回は、その適性や現代社会の中で求められる資質について伺います。
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007
大工について part2.
前回、大工という仕事に求められるスキルや、社長が考える理想の大工像についてお話を伺いました。part2では昔と今の大工さんの違いに焦点を当ててお話を伺います。
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006
大工について part1.
前回、社長から注文住宅をつくる上で、大工の腕や技術がいかに重要かというお話しがありましたが、今回はさらに踏み込んで、大工という職業についてお伺いしたいと思います。
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005
注文住宅で大切なこと
多くの方が関心を持っている注文住宅ですが、本質を理解しないまま進んでしまうことも少なくありません。今回は本来の注文住宅とは何なのか...お話しを伺いました。
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004
注文住宅が向いてる方、向かない方について
前回、社長のお話を伺って注文住宅への熱い思いを知ることが出来ました。今回は具体的にどのような方が注文住宅に向いているのか、また逆に向いていないのかを伺いたいと思います。
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003
注文住宅とは
前回はWISE SCAPEの10年間を振り返り、今後の展望についてお話を伺いました。今回は社長が考える「注文住宅」とは何か?、本当の意味での家づくりとは何かを語っていただきます。
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002
WISE SCAPEを立ち上げてからその後
前回はWISE SCAPE誕生までの経過について社長の想いとともにお伝えしました。第二回目はWISE SCAPE立ち上げからのその後を伺いました。
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001
WISE SCAPEが出来るまで
お客さまからよく、社長の思いをもっと外に発信すればよいのに..との声が多々あり、それなら聞いてみようとこの企画が誕生しました。記念すべき第一回目はWISE SCAPEの誕生するまでを伺いたいと思います。