WISE SCAPE - ワイズスケープ / 福島の木造注文住宅、住宅設計

DIALOGUE015

木材について part6.

話し手:代表取締役 渡邊

「木材について part6.」では、自然乾燥や低温乾燥の木が持つ本来の特徴と、
それを踏まえた建築の魅力について深掘りします。
癖を見極め、動きを予測しながら家をつくる知恵や、
木材に込められた文化と未来への代表の想いをお届けします。

一方で自然乾燥、低温乾燥の木は必然的に動くし狂うんですよ。ただ、木の見方が分かる人が見れば、こっちに動くとか分かります。家をつくるとしたら、まずは四角くに木を組みますよね。そういう場合、全部内側に動くようにつくるんですよ。お互いに離れないように。柱も右に動く、左に動くだろうと木を見て決めているんです。土台だって上に膨らまないように木を見てつくるんです。敷居とか全部そうです。床は下に動くように使うし、鴨居は上に動く(反る)様につくる。下に下がってはダメ。何間もある大開口なんて際立って上に動くようにつくらないと駄目です。

本来木は動くんです。自然の摂理。大工さんはその癖や動きを把握して使いこなす事が出来るんですよ。だから、木の躯体は木をほんとに生かしきったら強い躯体になるんです。お互いが補完するようになる。何度も言いますけど、だから木の性質を殺してしまうのはもったいない。木は使いようなので。もっと突き詰めると、木は育ったように使えと言われてます。南側で育った木は南側の柱に。山の北側、日の当たらないようなところで育った木は北側に使うなど。

当然今は丸太で入荷するわけではなく規程の寸法に加工された状態で入荷するからある意味難しいけど、木目や年輪をみて、枝がこっちだから、節がこっちだからなんとなくこっちだろうっていうのは分かるけどね。

ただね、そこまで考えないと家として成り立たないか、というとね、2階建てくらいだからねって思う事もあるし、リフォームとかで既存家屋を解体させてもらうとこんな細い材使ってるのか、大胆だなって(悪い意味で)こともあるんだけどね。まあ今まで倒れてないからいいのかな、と思うしかない。

木ってほんとうにちゃんと使えば唯一無二くらいの躯体になるはずで。奥が深くて面白いんです。だからなんか余計に、若い子が「設計したいんです、木の家つくりたいんです」って言いながら、杉も桧も分からないような状態では駄目だと思うんですよ。

同じ杉でも全然違うし、貴方が扱ってみたいと思う木ってすごく奥が深いし個性があって、本当に面白いんですよって、それを知らないのではつまらなくない?って思う。そもそも長い年月をかけて育ってきた木の歴史や、そこに携わってきた山の方々のご尽力...。そこへの尊敬や謙虚さがないと、木造の設計です、木造建築でご飯食べたい、食べてますって言う資格ないよね。

もっと調べて、触ったり、嗅いだり(笑)、してみればいいのにって。それをやらないと木の見方って分からないと思うし、この木が良い木なんだなって実際に触ったり確かめたりしてみないとわからないですよね。

そういう想いのつくり手、木の使い手に巡り合えたらそれはもう幸せですよ。あとはお金ってこともありますけど(笑)存分につくり手の人がやって良いですよ、ってなったらお互いに幸せだと思いますよ。そういう事じゃないかな。ああ、そういうテーマの話じゃなかったか(笑)

今ね、私は価格と質を考えながら、木材に対する自分の想いを逆行させて決済することがあるのが辛い...。現実との戦い...。木っていう一定の質のものを担保できるような材を集めるのが大変。産地と管理している材木屋さんによっても違いますし。ほんとに悩ましいです。このままいくと数十年、もっと早いかもしれない、で普通の木の家すらつくれなくなってしまうんじゃないかな。木の使い手も担い手もいなくなる。木っぽい素材しか手に入らない、そういう時代はもしかしたらもう目の前かもしれない...。それはほんとに嘆かわしいし、切ないことだけど、もう山の方々や本当の意味での木造住宅、建築を現場で担っている人たちだけの力ではどうにもならないところまで来てしまっているんじゃないかな...。

だからね、何とかね、これだけ魅了してくれる木だし、いろんなことを教えてくれる木だからね。その文化というか、例え一握りだとしても本当の意味での木の文化をね、絶やさずに繋いでいきたいよね。日本の木とそれを生かしてきたこの知恵、文化はそれだけのもの、宝物だから。

木は長い年月を経て育まれた自然の恵みであり、先人の知恵と文化が詰まった宝物です。
この貴重な木の文化を絶やさず、未来へ繋ぎ続けることが 私たちのの使命で責任があると感じています。