WISE SCAPE - ワイズスケープ / 福島の木造注文住宅、住宅設計

DIALOGUE008

大工について part3.

話し手:代表取締役 渡邊

大工さんに向いている人とはどんな方でしょうか?
今回は、その適性や現代社会の中で求められる資質について伺います。

大工に向いてる人はどんな方ですか?

いろんなタイプの人がいるんだけど、私は不器用な人だと思います。なぜならば、さっきの話じゃないけど、コツコツ積み上げられないとダメなんだよね。簡単に飽きちゃダメなのよ。飽きるような仕事じゃないんだけどね。ほんとに奥が深いんで。だけど、結構器用な子っていうのはできるって思っちゃうんだよね。そして変に先をみちゃうし、今で言うコスパとかタイパとか、こんなもんかなと自分に都合が良いように考えて、選択肢を考えちゃうんだな。他の職の方が良さそうだなとか...。最初は苦労した方がいいんですけど。最初はできない方がいい。「なぜだろう?」「どうしたらいいだろう?」と考えた方が後々絶対出来るようになるし、結構大成する。変に器用なよりは不器用な方がいいと思いますよ、私は。要領が良くない方が。ただ要領が良くないのと、学習しない、学習出来ないのは違う。真面目なだけでもダメだからな。不器用だけど自分で一所懸命学習できるってことだね。それが一番大事。自ら学べるか。根気強くね。でもそれは何の仕事でもそうだと思うよ。

ただ、今はこれまでよりも自分の持ってるものを若い子は発揮できにくい世の中になっていると思いますよ。もっと本気で向き合って、夢中になってやったら一定のレベルまでは絶対行くと思うんですよね、誰でも。

だけど、今その機会すらないじゃない?社会的に、なんか...求められてない。是とされないっていうか、そこに行く前の時点でストッパーかかっちゃう。ほどほどにみたいな。世の中的にもう何にしたって、その先まで見えないのになんかやった気になって終わっちゃって。結局そうやって中途半端な感じで...。そういう風に(全力、夢中で)やりにくい世の中になってるから。

やっぱり量やらないと質は生まれないので。特にこういう仕事は余計に。もう一定の量は絶対必要なので、それやって初めて質が生まれてきて、いろんな勘どころも分かってくるし、より面白さもわかるし難しさもわかる。だから、一定の量に行く前に全てが止められちゃうっていうか、そんなやらなくていいですみたいな。それが歯がゆいよね。

youtubeとか何かでバーチャルで見てやった気になって、知った気になるというか、できる気になってるみたい。そういう世の中で一所懸命やってる人を馬鹿にするみたいな風潮じゃないですか。どっちかっていうと、そんな大変なことやってみたいな。コスパとかタイパとか、私は大嫌いな言葉だけどそれを良しとする風潮があるので、余計良くないと思います。無駄なこと?を一切排除するような風潮じゃないですか。でもさ、無駄なこと積み上げないと、質も、深さも広さも、魅力も生まれないからね。そもそもさ、無駄なことをやらないと何が合理的かなんてわからなくない?無駄かどうかってその物事に精通していないとわからないでしょ?ましてさ、無駄かどうかはその後の行動次第だよね?それが無駄かどうかは、その時は分からないでしょ?

今、子供たちを見ていると学校はそういう状態ですよね~

そう、そうなのよ、教育がそうだから中途半端になっちゃうんですよ。だからそれは元を正せばもう教育からだし、誤解を恐れずに言えば家庭環境、躾からだから。すごい根が深いと思うんですよ。

ある意味可哀想ですよ。若い子は学校を卒業して、ポンと社会に出た瞬間に実は気合と根性だ、みたいな話になりそれがないと通用しませんみたいな...、いや逆だな。上に行けば行くほど他者にはない圧倒的な強みであり技術が必要になっていくんだけど、それを身につけたり、練り上げられた腕、実力を手に入れるには、一定やり続ける、例えすぐに結果が出なくても、先が見えなくても信じてやり続けるっていう所謂忍耐、今でいう無駄?タイパやコスパと矛盾することが必要になって。そのためにはやっぱりなんだかんだ気合と根性みたいなのがあるので。

なんでもそうだと思うんですよ。いろんな職業に一定当てはまると思いますけど、大工さんですからね。さっき冒頭で言ったように、木造建築では右に出るものがいないわけですから。そりゃあ、人と同じことやって簡単になれるものじゃないですよ。

これは余談というか、もう私個人の嗜好になっちゃうのかもしれないけど、正直に言えば私は大工さんは建築が好きっていうよりも、やっぱり木が好き、そうであってほしいなと思いますけどね。木が好きってことは木を生かして使おうと思うじゃん。好きだから。それはあってほしいと思います。木になんの興味もないけど、大工さんやってますっていうのはちょっとな...。

次回は大工についての最終章です。
どうぞお楽しみに。