WISE SCAPE - ワイズスケープ / 福島の木造注文住宅、住宅設計

DIALOGUE007

大工について part2.

話し手:代表取締役 渡邊

前回、大工という仕事に求められるスキルや、社長が考える理想の大工像についてお話を伺いました。
part2では昔と今の大工さんの違いに焦点を当ててお話を伺います。

イメージとしては、昔の大工さんって、それこそ本当に社長がいう大工さんみたいな感じの人が多かったと思うんですけど、昔の大工さんと、今の大工さんの違いってなんですか?

ん~一定そういう風に流されちゃったのかな。

もう時代が変わって、プレカットだとか、生産性とか効率だとか...。それも1つの企業の考え方ですけどね。要するに大工さんって属人的なんですよ。属人的っていうのは個人、職人だからね。人に紐づくんですよ。スキルとかいろんなことが。それは避けたいじゃないですか、大企業とかチェーン店とかは。属人的になるとばらつきが出るし。要するに安定生産って難しいじゃないですか。

そういう意味もあってオートマチック化して、大工さんじゃなくてもつくれるようにすると、イコール数、量になりますよね。それができるシステムをつくるんです。そうなるとそういう人たち(大企業やチェーン)にとっては属人的な大工さんはある意味でいらないですよね。素晴らしい技術を持っていられてもね...。如何に早く作るか、が勝負だから...。語弊があるかもしれないけど牙を抜く。牙を抜いてあなたたちは作業者です、仕事はきらさず用意します、とかね。全てがね、そういう考えではないかもしれないけどね。

誰でも作れる。それはある面から見れば安定生産だし、安定品質だし、良い面も当然ある。でも別な面からみれば、個に紐づく技術はいらない、代替可能、標準化されたものしか作れない、ということを生んでいる。今はもう如何に「簡単に早く」それが大きな流れとなってしまった。一方で誤解を恐れずに言えばそういう簡単な仕事の方がいいっていう大工さんも一定数いるということ...。

工場でつくられたものをあとは取り付けるだけ、とか...。それはほんとに悲しい。そういう方を大工さんとは呼びたくないけど...。だって鑿も使えない、鉋も使えない、鋸も使えない。そもそも刃物も研げないし、差金も使いこなせない。インパクト一つで出来ちゃう。それは大工さんじゃないでしょ?私の感覚からしたら作業者だよ。素人のDIYと同じ分類。言葉悪いですけど...。作業者にも技術の差はあると思いますし、気の利いた人、本当に言われたことだけしかやらない人、言われたことすらできない人、それはあると思います。そういう中でも全体を差配する人だっていると思うんですよ。出来る人はどんな環境だって工夫してやるから。だけど大工さんでは...、ないよね。

大7、大8みたいな。なんか悲しい。しょうがないんですけどどこかサラリーマンみたいになってるんですよね。

本当の意味での大工さん、左官屋さん、建具屋さん...。この辺りの職人さんはもう絶滅危惧種。天然記念物(笑)うちみたいな会社の形態も絶滅危惧種。大工さんを一定雇って、しかも墨付け手刻みをやってるのはもう日本中探したって数えるほどしかないんじゃないかな。レッドリスト?だと思います。組織、会社としてやってるとこは、全国に何社あるのかな? 組織的には各県で数社なんじゃないですか。本来は保護対象になった方がいい(笑)

またね、今は個人でもたくさん仕事があるから。まして一定大工さんとしての経験があったりしたら余計にね。この人手不足というワードがそれに拍車をかける。大工さんとしては中途半端でも、決まった型、組み立てる作業が出来ればいくらでも現場仕事はある。仕事の中身を除けばいくらでもあると思うよ。そしてやりようによっては儲かるから。会社に所属してない個人事業主で、経費もなんか4割ぐらい?落とせるのかな、確定申告で。

個人事業主で800万~1,000万ぐらいの年収だったら多分税金1番安いんじゃないのかな。でもいいんだよ、それに見合う技術とか経験、腕、志をもっていればね。そのぐらい(年収1,000万)もらっても良い、私はそれでも安いぐらいの職だと思うからね、本当の大工さんなら。でも本当の意味での大工さんという仕事、役割にはあまり見向きもしなくなって、半ば自分たちでも放棄して、如何に簡単に、楽に稼ぐか、儲けるかが価値基準になってしまった。

何度も言うけど、本来大工さんはもっと可能性のある仕事だし、世の中から尊敬される仕事、職種、職業だし、それに見合った力を持ってるはずなんですよ。大工さんっていう仕事は。だからすごく腹立たしいですよね。私はそこは本当に、もう抗っている。もうずっと前から戦ってるみたいな。なんか負けそうだけどね、...世の中の流れに。

大工についてpart3へ続く