WISE SCAPE - ワイズスケープ / 福島の木造注文住宅、住宅設計

INTERVIEW

006.共感と共鳴が生む心地よい家

福島市松川の高台の住宅街にあるTさま邸では、いつも爽やかな風が家の中を吹き抜けていきます。家の中からは手入れの行き届いた緑溢れるお庭と、もともと街路樹として植わっていたという立派な桜の木、さらに道路を挟んで向かいの広い公園を見渡せます。2階の窓からは遠くに山を眺望でき、住宅街とは思えない開放感と気持ちの良い景色が広がります。"美の共感"今回のインタビューを通してご主人の口から何度も出てきた言葉。それこそが、Tさまが家づくりをするにあたって最も重視したことであり、弊社に依頼してくださった理由でもありました。

ここなら安心してまかせられると思いました

2010年秋頃、ご主人の仕事の都合でアメリカに在住していたTさまご家族は、帰国を機に家づくりを考え始めます。アメリカでは、ご夫婦と2人の息子さんの4人でアパートに暮らしていました。アメリカのアパートは日本と違い、一軒家の様に広かったそうです。

「日本の狭いアパートで子供たちがのびのびと遊べないのはかわいそうだと思ったので、家を建てたいと思ったんです」と奥さまが当時を振り返ります。

木の家をつくるハウスメーカーや工務店を見て回りますが、家全体がトータルでデザインされていないちぐはぐな印象を受けることや、木の使い方に違和感を覚えることも。そんな時、住宅情報誌で弊社の広告を見つけます。すでに他の工務店と打合せを進めていましたが、話だけでも聞いてみよう!と思い切って問い合わせたのが始まりでした。

弊社で手掛けた家を何軒か見学すると、細部から大工さんの高い技術力やこだわりが見て取れたと言います。

「例えばこの(和室の)天井、杉板の赤身と白身が綺麗に配置されていますよね。細かいことですが、これが自然に、こちらが言わずとも当たり前のようにできることは大切だと思うんです。完成住宅を見学して、注文せずともやってくれる会社だと分かり、ここなら安心して任せられると思いました。」とご主人。

Tさまのご実家は、橋梁の設計者だったお祖父さんが設計し、主構造は鉄骨造だが室内は続きの座敷と洋間を備えた本格的なもので、Tさんはそこで見る目を養ったそうです。

打合せが始まって間もない2011年3月11日、東日本大震災が発生しました。直後はご主人のご実家である宮崎県に避難したものの、放射能に関して過度の心配がないと判断し、予定通り家を建てる事を決意します。家づくりのイメージが決まってからは7月の着工まであっという間でした。

"美の共感"ができていた

そんな中でも最後まで詳細が決まらなかったのは、Tさまが最もこだわった和室です。畳スペースやシンプルな和室ではなく、しっかりとした和室が良かったものの、堅苦しい書院づくりの和室もまた違う...と中々イメージが定まらなかったそう。

家全体に対する要望の基本は、あまり部屋を区切らず、大らかな見通しの良い空間にすることが一つのテーマでしたが、一方でそれとは一線を画し、家族はもちろん、来客時もお互い気兼ねなく使えてかつ、礼儀や日本の洗練された美しさを感じることができる和室も大切な思いでした。

そんな折、とある雑誌で理想に近い和室の写真を見つけ、打合せで見てもらおうと準備しておくと、渡邊(弊社社長)も同じ雑誌の同じ写真を用意してきていたと言います。「これにはびっくりしましたが、渡邊さんと"美の共感"ができていたという事ですよね」とご主人が語ります。玄関框の高さから障子のデザインにいたるまでTさんの見識は確かであり、「自分たちと同じ価値観をお持ちであるだけに、身の引き締まる思いがしました」と渡邊は語ります。

学生時代、書家に川又南岳氏に師事した奥さまも価値観は同じでした。キッチンにまわりについてアイデアをまとめたほか、玄関脇の収納を仕切るのれんを自作しました。

Tさまとお付き合いは、弊社に良い影響をもたらしてくれました。そのひとつがMieleの食洗機です。

今では販売代理店となっていますが、もともとは、Tさまが要望された事がきっかけでその良さを知り、取り扱いが始まりました。また、いつもお世話になっているセンスの良い造園屋さんも、Tさまからご紹介いただきました。このように、Tさまは今のWISE SCAPEにとって、なくてはならない存在です。

"美の共感"がTさまとの家づくりのキーワードですが、昨今は目に見える、分かりやすい数値ばかりが強調される風潮です。もちろん耐震性や、断熱性、気密性その他家のベースになる部分が大切なのは言うまでもありません。ただ、家は「感情」のある「人」が暮らす場所です。本来、家には数値だけでは測れない部分がたくさんあります。木や土などの質感、匂いなど、家自体の肌触りはもちろん、空の色や、風の匂いや木々の色づき、光や影。五感を心地よく刺激する要素を取り入れること。それが共鳴しあって生まれる心地よさ。それが戸建てならでは、の価値でもあります。

"美の共感"その言葉には、単に表層的な美しさだけではない、家そのものに対する考え方や、木材、作り手、自然そのものへの敬意といった意味も含まれているのかもれません。

2階から見た吹抜のリビング。
できるだけ広く感じる様に柱や壁の少ない空間にしたい、という要望に応え開放的な空間を実現。
高天井の玄関の上にある書斎。
2匹の愛猫も窓から外と眺めるのがお気に入りだそう。